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合同会社の社員権の私募・自己募集

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合同会社の社員権(ここでは、株式会社でいうところの株式のようなものと思ってください。)の私募・自己募集は、企業の資金調達、例えば、ベンチャー企業がエンジェル投資家からの出資を受けたり、あるいは、企業が事業再生をする場合に、投資家からの出資を受けたりするのに1つの有効な手段といえます。

そして、合同会社の社員権の私募・自己募集に関しては、金融商品取引業の登録が不要といわれています。しかし、注意すべき点が、いくつかあります。ここではその一部を取り上げます。

第1に、確かに社員権の私募・自己募集に関しては、金融商品取引業の登録は不要ですが、私募・自己募集の「取扱い」に関しては、金融商品取引業の登録が必要となります。したがって、例えば、外部の営業会社(かつ、金融商品取引業の無登録業者)に出資者の紹介等を委託するのは、非常に問題です(※)

第2に、合同会社の設計によっては、集団投資スキーム持分と同視され得るとの有力な見解(国民生活センター等)があります。もし、この見解が正しく、本当に集団投資スキーム持分に該当するのであれば、当然、金融商品取引業の登録が必要となります。但し、この見解は、金融商品取引法の明文には反するものですので、個人的には与することはできません。しかしながら、この見解は、将来的に、私募・自己募集を行う企業に、何らかのリスクを招来する恐れがあります。

第3に、金融商品取引業の登録が必要ではない場合にも、合同会社の社員権の私募・自己募集は、行為として、他のいくつかの法の規制がかかるため、例えば、社員権取得契約を締結するにも色々と注意が必要です。

確かに、社員権の私募・自己募集の範囲にとどまるのであれば、原則として、金融商品取引業の登録は不要ですが、これには、当然、例外もありますし、また、うっかり、私募・自己募集の範疇を超えてしまうこともあり得ます。

また、合同会社の社員権の私募・自己募集の契約書の作成は残念ながら単独では成り立ちません。例えば、重要事項等説明書なるものをしっかり整備したり、会社の定款の規定も改正するなど、非常に、大掛かりな作業になります。

合同会社の資金調達を阻害しないために、その社員権の私募・自己募集に関しては、金融商品取引業の登録は不要とはされているのですが、実際にこれを行うとなると、会社法、金融商品取引法、その他の法令を意識して、しっかりとした書類を整備しなければなりません。また、その運用についても、しっかり行っていく必要があります。

したがって、合同会社が、社員権の私募・自己募集を資金調達の一手段として検討するには、専門家に相談する必要があると思いますし、経営者は、その上で、適切な経営判断を下すべきであると考えます。

コンブリオチャンネル様とオンラインサロン公共政策行政書士Laboとのコラボ企画で合同会社の資金調達について対談いたしました。

※ 2022年10月3日の内閣府令施行により、合同会社の社員権の私募・自己募集は業務執行社員のみ行えることになりました。

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