はじめに
平成31年4月施行の改正入管法により、新たな在留資格「特定技能」が創設されました。5年間で約34万5千人の受け入れを見込んでいます(下記14業種にそれぞれ「割り当て」(5年間の受け入れ見込み最大値)があります)。
「特定技能」へのルートは4つあります。まず、(1)日本国外から呼び寄せるルートと(2)日本国内で変更するルートがあります。そして、それぞれが、① 試験(日本語及び技能)ルートと② 技能実習2号からの変更ルートに分かれます。現在、特定技能は14業種に限定されております。しかし、技能実習2号のすべての職種が変更できるわけではありません。細かい検討が必要です。
- 国外×試験ルート (1)×①
- 国外×元技能実習生ルート (1)×②
- 国内×試験ルート (2)×①
- 国内×技能実習2号ルート (2)×②
特定技能14業種(5年間の割り当て)
- 介護(60,000人)
- ビルクリーニング(37,000人)
- 素形材産業(21,500人)
- 産業機械製造業(5,250人)
- 電気・電子情報関連産業(4,700人)
- 建設(40,000人)
- 造船・舶用工業(13,000人)
- 自動車(7,000人)
- 航空(2,200人)
- 宿泊(22,000人)
- 農業(36,500人)
- 漁業(9,000人)
- 飲食料品製造業(34,000人)
- 外食業(53,000人)
特定技能外国人支援
「特定技能所属機関」(企業など)は「1号特定技能外国人支援計画」を作成しなければなりません。支援計画には職業生活、日常生活または社会生活上の支援の内容を記載しなければなりません。大別すると次の通りです。
- 事前ガイダンスの提供
- 出入国する際の送迎
- 適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 日本語学習の機会の提供
- 相談又は苦情への対応
- 日本人との交流促進に係る支援
- 外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合
の転職支援 - 定期的な面談の実施,行政機関への通報
※ 上記支援の全部を「登録支援機関」(後述)に委託することができます。
特定技能所属機関(企業など)の各種届出義務
特定技能所属機関(企業など)は、特定技能雇用契約や1号特定技能外国人支援計画等に関する各種届出が義務づけられており、届出の不履行や虚偽の届出については罰則の対象とされていますので、留意が必要です。なお、各種届出の書類作成・提出等は国家資格者である行政書士に依頼することが可能です。
- 特定技能雇用契約に関する届出(契約変更、契約終了、新たな契約締結)
- 1号特定技能外国人支援計画に関する届出
- 登録支援機関との委託契約に関する届出(契約締結、契約変更、契約終了)
- 特定技能外国人の受け入れ困難時の届出
- 出入国または労働関係法令に関する不正行為等を知ったときの届出
- 特定技能外国人の受け入れ状況に関する届出(年4回)
- 1号特定技能外国人支援計画の実施状況に関する届出(年4回)
- 特定技能外国人の活動状況に関する届出(年4回)
※ 行政書士・弁護士でない者が報酬を得て上記の書類を作成すると1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
登録支援機関
- 特定技能所属機関は、「登録支援機関」に1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託した場合は、同計画の適正な実施の確保に係る基準に適合しているとみなされます。
- 業種ごとに方針、運用要領に違いがございます。
- 一定の要件を満たせば、登録支援機関として、出入国管理庁長官の登録を受けることができます。5年ごとに更新があります。
※ 登録支援機関は一定の要件を満たす法人以外でも行政書士などの登録も認められております。
登録支援機関の各種届出
登録支援機関にも各種届出義務があります。
- 変更の届出
- 休・廃止の届出
- 支援の実施状況に関する届出(年4回)
ワンストップサービス
行政書士は、各種届出書類の作成はもちろん、一定の資格を有していれば、在留資格(世間ではビザと呼ばれることもあります)の申請取次もできます。このため、行政書士で登録支援機関を兼ねる者は、コンプライアンスを重視する企業などのために特定技能のワンストップサービスを実現できる存在として期待されます。
- 行政書士は、特定技能所属機関(企業など)の各種届出の書類作成・提出を行います。
- 一定の行政書士は、特定技能の在留資格(いわゆるビザ)の申請書類の作成・申請取次を行います。
- 行政書士の内、一定の者は、登録支援機関として登録でき、企業の委託を受け特定技能外国人のために各種生活支援を行います。
※ 行政書士と連携が取れている登録支援機関であれば、上記と同様のサービスが期待できると思われます。
関連する実績及び略歴
- 申請取次行政書士
- 台湾国立中山大学政治学研究所(大学院)に留学
- 複数の大学で第2外国語中国語の元講師